第4章 迷夢…
慣れない場所の、慣れない雰囲気に、僕の視線も気持ちも落ち着くことなく、僕は時折顔を上げては周りを見回し、膝の上で握った手で指先を弄るしかなく…
どうにも居たたまれなくなった僕は、すぐ横の椅子に置いた学生鞄を掴むと、徐に腰を上げた。
やっぱり帰ろう…
こんな所にいちゃいけない…
足を一歩踏み出した、その時だった。
赤く染めた爪で飾った手が、僕の腕を掴んだ。
「何よ、もう帰る気? もうちょっとゆっくりしてお行きなさいな…」
「あ、あの、でも僕は…」
着物の胸を大きく肌蹴た女は、僕の腕にその豊かな胸を押し付けるようにして、僕を椅子へと引き戻した。
「あんた、見たところ立派なお宅のお坊ちゃんのようだねえ? と、言うことは…当然こっちの経験も…?」
赤い爪が、布越しに僕の中心を掻く。
「や、やめて下さい」
僕は咄嗟にその手を払い除けると、濃い化粧で覆われた女の顔を睨み見つけた。
なのに、
僕の手に指を絡めると、そのまま引き寄せ、
「まあ、初心(うぶ)だこと。いいんだよ、遠慮なんかしなくたってさ…。なんなら、ほら…、触ったって構やしないんだよ?」
長い睫毛をしばたかせ、ねっとりと絡むような目で見つめながら、僕の手を着物の中へと引き込んだ。
「………!」
指の先が胸の膨らみに触れた瞬間、僕の脳裏に蘇ったのは、僕の下で乱れる智子の姿だった。