第2章 令嬢は必死なんです
「殿下、お待ちになって!!」
私はビシッという音と共に手を伸ばす。黒髪の美少年、レオポルト第一王子が私をみて、ビクリと身体を震わせた
ああ、なんだか、嫌われているわね。でも、私はミア・リリアンヌ、子爵の地位を使ってまでこちらに遊びに来ているのよ!!今日こそ殿下の心を射止め……
「あら?私ったら…確かに乙女ゲームのキャラだからと殿下の心を射止めようとしましたけど」
「おとめ、げえむ?」
殿下は首をかしげた。
殿下と目があった瞬間
「え、乙女ゲーム!?」
すぐ、思い出した。その単語を、私は大好きだったはずだわ!!
私はミア・リリアンヌ。殿下の心を射止めて、自分が王妃になることを夢見ている。
他の男等、目に入らないわ。
従妹のフローラが殿下と結ばれるなら、きっと私の地位も上がるわ……など、さっきまで、考えていた
けれど、私はグリフィスト・レオポルト、殿下の黒い瞳をみた瞬間、思いだしてしまった
「グリフィスト・レオポルト様…!?」
「……俺になにかようか?リリアンヌ子爵令嬢」
「私はミア・リリアンヌ!?」
「?…顔が青いな…どうした、どこか、悪いのか……おい、しっかりしろ!!」
私の視界が暗くなる。
私は思い出してしまったのだ、ここが、前世でプレイしていた乙女ゲーム【恋の錬金術】というハマっていたゲームのなかであることを
私は、悪役令嬢リリスに殺される、ヒロインの親友キャラ、ミア・リリアンヌ!!
――
「ミア、よかった、目覚めたんだな!!」
視界がぼんやりしていたが、今でははっきりとみえる。13歳くらいの金髪にモスグリーンの瞳をした少年が、私の手をギュッと握りしめて、ニパッと笑っていた。
「ローレン・リリアンヌ」
「お、おう。いきなりフルネームで呼ぶなんて、どうした」
ローレン、お兄様……ローレンお兄様はきょとんとした顔を私に向けた。
「……いやあああああ!!」
「お嬢様!?」「ミア!?」
ミシェとローレンお兄様が目を丸くする
最悪だ、夢じゃない……。私は、ミア・リリアンヌに転生したんだ……!