第5章 違和感(花宮side)
花宮side.
バタンッと洗面所のドアが乱暴に閉まるのを聞くと、俺はソファーにごろりと横になった。
さっきのゲーム……。
なんとなく目に付いてやってみたが、気になることがいくつかあった。
まず初めに違和感を覚えたのは、ゲームが立ち上がってすぐ。
オープニング画面のデザインが違っていたこと。
この格闘ゲームは昔から好んでやり込んでいたもので、何度も立ち上げてきたスタート画面を俺が見間違えるはずはない。
そして決定的な差異。
必殺技を繰り出せない。
コントローラーが壊れてる?
んなわけあるか。
他の動作はできるのに必殺技だけできないコントローラーがあってたまるか。
おそらく、ボタン配合が俺の知っているものと違っていたのだ。
俺はむくりと起き上がると、TV下に放置したままのディスクケースを手に取る。
『ストリート・ボーイズ2〜新たなる挑戦者たち〜』
パッケージには禍々しいオーラを放つ男の姿が描かれている。
全く同じだ、俺のやり込んでいたものと。
使用するゲーム機本体も同じものだし、コントローラーだって手に馴染んだものだ。
バージョンが違う?
そう思った俺は懐からスマホを取り出し、検索バーに『ストリート・ボーイズ2』と文字を打ったところで、指を止めた。
そうだ、ここじゃ使えねぇんだった。
視線を画面上部に滑らせると、そこには圏外のアナウンス。
スマホをソファーに放る。
苛立ちから舌打ちがでた。
あぁくそっ、どうなってやがる。
考えてみれば、ここに来たときからおかしかった。
部室の扉を開けたら突然煙が立ち込めて、目が覚めたら知らない女の家。
初めは女に誘拐でもされたのかと思っていたが、それだっておかしい。
あんな華奢な女が身長170cm以上の男を運べるか、普通?
何かがおかしい。
自分の心拍が嫌な予感に速まっていくのを感じていると、洗面所のドアががチャリと開いた。