第1章 家に帰るとイケメンがいた
その日は珍しく19時には帰宅できて、しかも金曜日で。
帰ったら何しようかな、とりあえず、冷蔵庫にあるお酒は飲むぞ。
あのキンキンに冷えた梅酒をかーっと飲むのだ!
と意気込んで自宅マンションの廊下を歩いていた時だった。
突然、目の前のドアの隙間から、ぱあぁぁあと尋常じゃない光りが溢れた。
目をこする。
えっ、なにこれ。
あの、そこ私の部屋なんですけど!?
急いで鍵を回して、ドアを開けて。
モフっとした煙が私の体を包む。
「ゴホッ、ゴホッ……」
煙が目にしみる、痛い。
しばらく咳き込んでいたけど、玄関のドアを開けていたこともあり、しだいに煙が晴れてきて。
リビングに呆然と立ちすくむ一つの影が浮き上がった。
それは、黒髪の男だった。
半袖ワイシャツに黒ズボンと学生らしい姿なので、高校生なのかもしれない。
汗をかいているのか、その黒髪はしっとりと濡れ、こめかみに伝うしずくを男はぬぐう。
格好の割に、大人っぽい雰囲気。
その顔が、ギロりとこちらを向いた。
あっ、イケメン。
「おい、俺を誘拐するとは……いい度胸じゃねーか」