第41章 【病気】×【悲恋】
近くの本屋で買った本を持ち、コンコンと扉を叩く。
少しして「はい」と声がしてそっと扉を開けた。
「これ、頼まれた本買ってきたよ。」
ベッドに居る空に渡すと、彼は小さく笑った。
「ありがとう、」
「うん!体調は…どう?」
私がそう聞くと、一瞬顔を曇らせる。その一瞬を、私は見逃さなかった。
「大丈夫だよ。」
ああ、また嘘を吐いた。私は、知ってるんだ。嘘を吐いた時の癖。
悲しくて、残酷な、君の嘘。私は弱いから、同じく嘘を返す。
「そっか、それは良かった。」
私は上手く笑えているかな?私が空を悲しませる訳には行かないから。
袋から本を取り出し、空は本を読み始める。
私はベッドの隣の椅子に座って、ぼんやりと外を眺める。
静かな空間だけど、居心地は悪くない。
寧ろ、私はこの空間が大好きだ。
ここから外を見るのも、私は結構好きだ。本のベージをめくる音だって。
そんな静かな空間を2人過ごしていると、空が口を開いた。
「…ねぇ、雨衣はさ…」
「…うん、」
「如何して、いつもここに来てくれるの?」
冷たい空気が、流れた気がした。
丁度いいはずの冷房が、やけに寒い。
「え…、っと、」
やばい、泣いてしまいそうだ。
“空の事が好きだから”なんて、言えない。
私は、お母さん達が話しているのを聞いてしまっていた。
空は、もう長くないって。
好きで大好きで、一分一秒でも長く一緒に居たいからだなんて言えない。
伝えたら、関係も崩れてもうここには来れなくなってしまう。
そんな状態で、永遠の別れなんて絶対に嫌だ。
「どうせ、暇だから!…そ、それに…心配、だから。」
苦しい嘘を吐く。その嘘は、一瞬にして見破られてしまう。
「嘘だ。」
「……ごめん……私、帰るね。」
なんだか今度は居心地が悪くなってきて、私は病室を飛び出した。
途中すれ違った先生が、何かを言っていたけれど私には聞こえなかった。
それからしばらく、私が病院に行くことは無かった。