第35章 【初恋】×【10年後】
公園を過ぎて歩いて行くと、通っていた小学校があった。
『雨衣ちゃん、一緒に帰ろう!』
『うん!帰ろ!』
集団登校が無い時は、2人、仲良く手を繋いで帰ってた。
昔は男女関係とか、お互い意識してなかったから、手を繋ぐことに何の抵抗も無かった。
大人の人からは、よく微笑ましいって言われてたっけ。
中学になって意識しちゃって、それも無くなったけれど。
「中学校にも、行ってみようかな…。」
中学校の時のことを思い出すのは、悲しくなりそうで、あまり気が乗らなかった。
「どうしようかな…」
そう口にした瞬間、ふと、2人の秘密の場所を思い出した。
――そっか。そこに行けば良いんだ。
家からは少し距離があるんだけど、辛い時にはよく2人でそこに行ってた。
そこに行くと、いつも自然と心が落ち着く場所。
ここから中学校の方を通り過ぎて、ちょっと先の方にある場所。
今から行って帰ってくるのに、時間は丁度いい。
幼稚園とか学校とかで悲しい事があった時とか、
家に帰りたくない時とか、2人で仲良くそこの場所に行ったんだっけ。
1人で行くのは危ないからって理由で、行く時には必ず2人で行ってた。
…あの日以外は。
『引っ越すことずっと内緒にしてたの?空くんのバカ!』
『言えるはずない!雨衣ちゃん、ずっと一緒に居ようって言うから…!』
中学2年生になったばかりの頃、突然、お母さんから空くんが引越すって聞いて、私が一方的に怒って喧嘩して。
ずっと一緒に居たのに離れてしまう、引っ越すことを言ってくれなかった、
ずっと隣にいた人が突然居なくなってしまう、今更恋を自覚してしまった。
とか、色んな思いがあったんだと思う。
喧嘩したのなんて初めてだったから、隣の家に喧嘩相手が居る家にも中々帰りたくなくて。
私はその日、しばらく帰らずにその場所に居た。
もちろん、帰って叱られたけど。
あの時の事は、ちゃんと謝りたい。
今なら、引越しのことを言えなかった理由も、ちゃんと分かる気がするから。
空くんの引っ越しの日、私は何も言えずに居た。
ごめんねも、さよならも、また会おうも、言えなくて。
ただ、迎えに来ると言う空くんの言葉を聞いて、最後に頷いただけだった。