第10章 10.最善の道
また涙が出そうになる。
何日ぶりに見るんだろう、智くんの顔
翔「じゃ、じゃあ俺ここで!バイバイ!」
智くんを家の前で待ってたら、
翔くんと一緒にトボトボと帰ってきた。
彼女さんがいなくてホッとする心
「なーに?どったの?」
翔くんが走っていって智くんが
微笑みながら私に近づいてきた。
「動物園は?楽しかったぁ?」
『う、うん。智くんに似てる猿いたよ』
「んふふ、そんな似てる?」
『うん。似てる』
喋れた。
いつもみたいに喋れた。
『智くん』
「んあ?なに?」
『智くん……っ……』
あーだめ。また涙が出てくる。
「なぁに泣いてんの」
『っ……だって……智くん…っ…
会ってくれないんだもん。…っ…なんで?』
「……そっか、ごめんごめん
めいちゃんが嫌がると思ったの」
"めいちゃん"だって、
智くんの口から出たその名前にズキッと
胸が痛む。
『彼女ができたら…っ…話しちゃだめ?
彼女ができたら…っ………全部だめなの?』
そんな我が儘な質問をしたら、
智くんが一瞬だけ悲しい顔をした。
「……だめ」
『っ……なんで?』
「ダメだよ。ダメなの……もう」
『………わかんないよ、智くんのこと!』
ちゃんと話すつもりだったのに、
その場で崩れ落ちて泣いてしまった。