第1章 冬

どう声をかければいいんだろう。
香苗は頭の引き出しという引き出しを開けて言葉を引っ張り出した。

原田は悪くない？
辛かったら泣いてもいいよ？
もっといい女探しなよ？
しかしどの言葉も違うような気がして、香苗は言葉をぐちゃぐちゃのまま引き出しに戻す。

啓太の表情は香苗からは分からない。
結局香苗は気まずい静寂を作る事しか出来なかった。