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【おそ松さん】水底に沈んだ

第1章 感情の入ったパンドラの箱【4】


3月下旬、某日。

その日は雨が降っていた。
そのジトジトとした雰囲気のせいで、松野家の六つ子はやる気と言うものをなくしていた。
ただ、その家の四男である一松は天気など気にもせず、いつも通り猫に餌をやりに出ていたのだ。

「……何、これ」

だから今の状況についてこられずにいる。
居間には見慣れぬ少女が2人いた。
唖然とする一松に、チョロ松が声を掛ける。

「あ、一松お帰り」

「ただいま……ってか、いや……何この状況」

一松は少女2人を指差してそう尋ねた。
妹と思われる方の少女はおそ松とボードゲームをしていた。
一方、姉と思われる方の少女は窓の近くに座り込んで延々と空を見上げている。
一松は何となく自分を見ているような、そんな変になる気分を味わっていた。

「あの子達今日泊まってくんだって。お葬式がこの近くであって、それに出席するらしいよ」

葬式と言う単語に、一松は思わずほんの一瞬だけ息が止まった感覚を覚える。

「ちなみにおそ松兄さんと一緒に遊んでるのが妹のアヤカちゃんで、あっちに座ってるのが姉のちゃんね」

チョロ松は2人を指差しながらそう言った。
よくよく見てみると、妹の方は目元に涙の後がある。
相当泣いたのか、目も赤く腫れ上がっていた。
が、姉の方は泣いた後が一切無い。
知人が死んでも悲しくないのか、と疑問を抱いたが口に出さずに飲み込んだ。

「へぇ……」

一松はそれだけ口にすると、彼女達と離れた場所に座る。
しばらくそのまま2人の様子を眺めていると、アヤカがに声を掛ける。

「お姉ちゃんも一緒に遊ぼうよ」

明るい声音でそう言うも、は妹に目もくれず冷たい声音で、

「嫌だよ、何で私がそんな面倒な事」

と返した。
あまりにも冷たい反応と声音に、その場の空気が凍りつく音がした気がした。
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