第3章 可哀想な子【6】
冬に入りかけの、少し寒い日のこと。
1人の少女が不幸な事故で死んだ。
その少女、矢谷のクラスメイトであった松野トド松はただただ信じられないと言った表情で葬儀の列に並んでいた。
トド松の並んでいる位置から、丁度悲しみに暮れ涙を流す彼女の双子の姉であったアヤカがその家族に介抱されているのが伺える。
「何でが死ななきゃいけなかったの……!!」
そんな声が聞こえる。
トド松は耐えきれずに別の方へ視線を移した。
彼女に声をかけたそうな表情だったが、それができていない様子の他のクラスメイト 。
無言で涙を流す彼女の親戚と思わしき人。
トド松からすれば、今はどれも思考するに値しないものだった。
かと言って自分が何かする、したいというわけでもない。
これは全て悪い夢で、目覚めて学校に向かえばまた彼女がいる。
そうであってほしい。
トド松はただそう願う。
だが現実は非常なのだ。
いくら夢を願ったところで、結局のところそれは夢でしかない。
恐らくだがトド松も心の底ではそれに気付いていたのだろう。
「本当、不幸だよね……」
トド松は誰にも気付かれないようにそう呟く。
その言葉は死んだ彼女の口癖だった。
可哀想な子。
最期まで不幸だったなんて。
トド松は心の中でそう考えた。