第1章 プロローグ。
机に広げられた課題はほぼ真っ白で、まだ数問しか解かれていない。
あと30分で今日が終わる。ちなみに明日も平日だ。もう寝なくてはロングスリーパーな私は確実に寝坊、あるいは先生の前で夢の中。
一秒でも早く寝なくてはいけないのだが、なんせこの紙切れの穴が埋まらない。
仕方ないじゃないか、集中出来ないのだから。
やる気はあるのだが気分がノッてくれないのだ。わかってくれるだろうか?
モチベーションの低い私では1時間かかってもコイツは埋まらないだろう。
あーぁ。お菓子あげるからさ、小人と靴屋みたいに、小人さんでも妖精さんでもいいから私の代わりに解いてくれないかなぁ。
でも、妖精ってあんまり頭がいいイメージないなぁ。
お菓子を受け取った手前解いてあげたくて、でもいざ取りかかってみたら、理解出来なくてコテンとされたら可愛いかも。
それでも分かったフリして、大丈夫ちょっと考えてるだけだから!って強がって、でも、解けなくて。涙目になられたらさらに可愛い。
……よしっ!
白い紙の上に散乱していた消しカスを払い、背筋を伸ばした。残念ながら、勉強の為ではない。
何もなくなった紙を指で2回、人差し指でノックした。所謂トイレノック。
途端に紙の上に薄い金の羽を持った妖精さんが現れた。お腹が空いたと、お腹を押さえてこちらを見上げてくる。
もちろん彼女は本物ではない、私の個性だ。
箱庭の映画館(リトルシアター)。
紙の上にイメージした通りの立体映像を映し出す。ヒーロー職が人気のこのご時世、一般に没個性と言われるモノ。
紙の上で摘むような指の形を作り、間にお菓子を映し出す。
それを彼女に向ければ、満面の笑みでそれを受け取った。
ただ、ヒーローになるつもりのない私は別に気にしていない。公務員にでもなってあとは趣味を全うする生活を夢見ているのだ。
私の豊かな妄想力は、脳内に留めて置くには爆発的過ぎた。書き出し誰かと共有したい。
そんなことで始めた小説書きは、既存の物語を使う夢小説だけでは収まらず、とうとうオリジナルまで書き始めた。
今では私を形成する程の趣味となっている。
妄想好きの私には、それをアニメ化できるこの個性が神個性に思える。
ありがとうお母さん。
結局この夜は妖精と戯れるうちに寝落ち。
翌日は寝坊。課題は勿論白紙です。