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愛される少女【HP】

第82章 闇の印


ハーマイオニーが心配そうに言った。

「下ろしてあげるさ。きっと方法を見つけるよ」

ロンが慰める。

「でも、今夜のように魔法省が総動員されてるときにあんなことをするなんて、狂ってるわ。つまりね、あんなことをしたら、ただじゃ済まないじゃない?飲み過ぎたのかしら、それとも、単に...」

ハーマイオニーが突然言葉を切って、後ろを振り向いた。私とハリーとロンも急いで振り返る。誰かが、私達のいる空地に向かってよろめきながらやって来る音がしたのだ。私達は、暗い木々の陰から聴こえる不規則な足音に耳を澄ませ、じっと待つ。突然、足音が止まった。

「誰ですか?」

ハリーが呼び掛けたが、しんとしている。ハリーが、立ち上がって木の陰から向こう側を窺う。

「どなたですか?」

ハリーがまた言った。すると、なんの前触れもなく、この森では聞き覚えのない声が静寂を破る。その声は、恐怖に駆られた叫びではなく、呪文のような音を発していた。

「"モースモードル"!」

すると、巨大な緑色に輝く何かが、ハリーの近くのあたりの暗闇から立ち昇った。それは、木々の梢を突き抜け、空へと舞い上がる。

「あれは、いったい...?」

ロンが弾けるように立ち上がり、息を呑んで、空に現れたものをよく見ようとした。私もさっと立ち上がって息を呑む。巨大な髑髏だ。エメラルド色の星のようなものが集まって描くその髑髏の口から、舌のように蛇が這い出していた。

見ている間に、それは高く高く上がり、緑がかった煙のもやを背負って、あたかも新しく出来た星座のように輝き、真っ黒な空に刻印を押したかのようになる。突然、周囲の森から湧き出すような悲鳴が上がった。いまや、髑髏は、気味の悪いネオンのように、森全体を照らし出すほど高く上がっている。

「誰かいるの?」

ハリーはもう一度声を掛けた。

「ハリー、早く、行くのよ!」

私がハッとして見ると、ハーマイオニーが、ハリーの上着の背を掴んで、引き戻していた。

「いったい、どうしたんだい?」

ハリーは、ハーマイオニーが青白い顔で震えているのを見て驚いている様子だ。

「ハリー、あれ、'闇の印'よ!'例のあの人'の印よ!」

「ヴォルデモートの...?」

『それは後でいいわ!早く行かないと!』

私はみんなを急がせる。

「そうね!ハリー、とにかく急いで!」

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