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愛される少女【HP】

第81章 森の中


「フレッドもジョージも、そう遠くへは行けないはずだ」

私も杖を取り出して、灯りを点けた。

「あれ、無い。そんなはずは...僕、杖を失くしちゃったよ!」

「冗談だろ?」

ハリーを除いて私達は杖を高く掲げ、弱い光りの先が地面に広がるようにする。ハリーが、そのあたりを隈なく探したが、杖はどこにも見当たらない。

「テントに置き忘れたかも」

「走ってるときに、ポケットから落ちたのかもしれないわ」

ロンの後に、ハーマイオニーが心配そうに言う。

「ああ。そうかもしれない...」

『困ったわね。杖がないと心許ないわよね?』

こんな状況の中で杖がないというのは、とても無防備だ。そのとき、ガサガサッと音がして、私達は跳び上がった。屋敷しもべ妖精のウィンキーが、近くの潅木の茂みから抜け出そうとしてもがいているみたいだ。

動き方が奇妙で、見るからに動き難そうである。まるで、見えない誰かが後ろから引き止めているかのようだ。私は、クラウチJr.かと内心思う。

「悪い魔法使いたちが居る!人が高く...空に高く!ウィンキーは近寄りません!」

前のめりになって懸命に走り続けようとしながら、ウィンキーはキーキー声で口走った。そして、ウィンキーは、自分を引き止めている力と抵抗するかのようにしながら、息を切らし、キーキー声をあげて、小道の向こう側の木立へと消えてしまう。

「いったい、どうなってるの?どうして、まともに走れないんだろ?」

「きっと、隠れてもいいっていう許可を取ってないんだよ」

ロンは、ウィンキーの後ろ姿を興味を持って目で追いながらそう言った。それに答えたハリー。

「ねえ、屋敷妖精って、とっても不当な扱いを受けてるわ!奴隷だわ。そうなのよ!あのクラウチさんていう人、ウィンキーをスタジアムの天辺に行かせて、ウィンキーはとっても怖がってた。その上、ウィンキーに魔法をかけて、あの連中がテントを踏みつけはじめても逃げられないようにしたんだわ!どうして誰も抗議しないのかしら?」

ハーマイオニーが憤然として言う。私はその言葉に俯く。私の家にも屋敷妖精がいるからだ。

「でも、妖精たち、満足してるんだろ?ウィンキーが競技場で言ったこと、聞いたじゃないか...'しもべ妖精は楽しんではいけないのでございます'って...そういうのが好きなんだよ。振り回されてるのが...」

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