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愛される少女【HP】

第78章 バクマンとクラウチ


それから、乱暴に焚き火を掻き回してヤカンを勢い良く沸騰させた。バグマンがみんなと一緒に草むらに座り込むと、アーサーさんが尋ねる。

「バーサ・ジョーキンズのことは、何か消息があったかね、ルード?」

「なしのつぶてだ。だが、彼女はそのうち現われるさ。あの仕様のないバーサのことだ...穴のあいた鍋みたいな記憶力、方向音痴、迷子になったのさ。絶対まちがいない。10月頃になったら、ひょっこり役所に戻って来て、まだ7月だと思ってるだろうよ」

気楽に言ったバグマン。

「そろそろ、捜索人を出して探したほうがいいんじゃないのか?」

パーシーが、バグマンにお茶を差し出すのを見ながら、アーサーさんが遠慮がちに提案した。しかし、バグマンは丸い目を見開いて無邪気に言う。

「バーティ・クラウチは、そればっかり言ってるなあ。しかし、いまはただの一人も無駄にはできん。おっ...噂をすればだ!バーティ!」

焚き火の傍に姿現しした魔法使いがやって来た。ルード・バグマンが昔のスズメバチ模様の競技用ローブを着て、草の上に足を投げ出している姿とは見事に対照的な人物だ。バーティ・クラウチ氏は、背筋を伸ばしていて、非の打ち所のない背広とネクタイ姿の初老の人物だった。

短い銀髪の分け目は、不自然なまでにまっすぐで、歯ブラシ状の口ヒゲは、まるで定規を当てて刈り込んだかのようだ。靴もピカピカに磨きあげられている。一目見て、規則を厳密に守ることが大切だと固く信じているパーシーが、クラウチ氏を崇拝している理由がわかった。クラウチ氏はマグルの服装に関する規則を完壁に守っているのだ。

「ちょっと座れよ、バーティ」

バグマンは傍の草むらを叩いて朗らかに言った。

「いや、ルード、遠慮する。ずいぶんあちこち君を探したのだ。ブルガリア側が、貴賓席にあと12席設けろと強く要求しているのだ」

そう言ったクラウチ氏の声は、少し苛立っている。

「ああ、そういうことを言ってたのか?私はまた、あいつが毛抜きを貸してくれと頼んでいるのかと思った。訛りがきつくて」

「クラウチさん!よろしければ、お茶はいかがですか?」

パーシーは息を切らしてそう言うと、身体をかがめて、さらにお辞儀をしたので、とても猫背に見えた。クラウチ氏は、少し驚いた様子でパーシーのほうを見た。

「あぁ。いただこう...有り難う、ウェーザビー君」

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