第11章 平和……?
「自分を信じても所詮は自分の記憶が頼りだからな……無理があった」
洗い物を済ませ、歌仙さん達の様子を見にいこうと歩きながらとにかくいたるところの部屋のなかを開けて確認しているが……見つからない。
誰もいなかったり鶴丸さんがいたり、誰も使ってない部屋だったり鶴丸さんが着替えてたり……
「鶴丸さんに聞けばよかったかな」
もしくは政府の人に……いや、やめておこう。
人ならざるものと戦っていたら戦闘中に電話とか無理だろう。
……戦ってるのかな。
「あ、刀帳を確認しなきゃ……あ、あれ……あれれ、ない」
長谷部に注意されたから胸の谷間に収納するのはやめたのだが……ない。
私のマイスマホがどこにも、ない!
こういうときこそ落ち着いて自分の記憶を辿ればと深呼吸を繰り返して目を閉じた。
お風呂に入って、二人が倒れたあと……堀川くんを呼びにいって服を借りて脱衣所に行き、巫女服の上に置いてたのを持っては……いった。
それで、政府の人と電話したあと歌仙さんと話して食事を用意するのに部屋から出たときには手には……なかった。
てことは、歌仙さん達のいる部屋に忘れてきたということだろう。
「……効率悪すぎて嫌になるな」
もっとうまく動きたい。
外の方を見ると三日月が見えた。
落ち着かなきゃと思うのにうまくできないと焦りが出てくる。
あの日、審神者に選んでもらえたとき……命を捨てるなら場所を変えようくらいの思いであったのに今は死のうなんて考えられない。
欲が、出てしまった。
幸せや安らぎがほしい。
政府の人が教えてくれた可能性を現実のものにしたい……みんなを幸せにして、それで私も……
「今を、生きていきたい」
月に手を伸ばしてみても届きはしない。
当たり前のことではあるが、私は必ずやる。
不可能を可能にする勢いで……
「絶対、幸せな暖かい本丸を作るよ。それが私の……やりたいことだもん」
初めて心の底から願ったこと。
命尽きるその日まで……私はすべてを彼らに捧げよう。