第4章 腹の底から
「宗介、お疲れ」
「おお、お疲れ」
合同練習が終わった。更衣室で着替えていた俺のところへ、凛が髪を拭きながらやってきた。
「なあ、お前、今日何で遅れてきたんだ?」
「・・・用事だよ」
不意に凛に聞かれ、着替えをする手が止まる。
「用事?何の?」
「別に・・・たいしたことじゃねえよ」
さてどうやって切り抜けようか、そう思っていると、凛の方から話題を変えてくれた。
「あ!!そういやお前、江に聞いたんだけどよ」
「あ?」
「ヒカリのこといじめた?らしいな」
「はぁ?」
「ほら岩鳶の1年の・・・えっと小さめの奴」
「ああ・・・別にいじめてねえよ。少し話しただけだ」
あいつ・・・言いつけやがったな。だが、俺はいじめたつもりは微塵もない。まあ・・・反応が面白かったから、ちょっとからかったといえば、からかったかもしれない。
「お前、ただでさえでかくて目つき悪いんだから気をつけろよ?」
「わかってる・・・そんじゃお先」
でかくて目つき悪いのはガキの頃からだろ、などと心の中でつっこみながら俺は更衣室を後にした。