第1章 ふたりの出逢い
最悪だ。
今日は今まで生きてきた中で、一番、最悪の日になった。
彼氏とのデートの約束をしてたあたしは、約束の時間より少し早く待ち合わせ場所に着いた。
すると、目の前のカフェから彼氏が知らない女の子と手を繋いで出てくるのが見えたんだ。
「最低…」
あたしは小さく呟くと、彼氏に気付かれないようにその場を去った。
そして、ラビチャで「サヨナラ」とだけ送った。
その後、いくら待っても彼氏からの返事はなかった。
だから、間違いなくあたしが二番目だったんだ。
きっと、ちょうどよかったって思ってるに違いない。
「もう一杯、同じのください。」
勢いで入ったbarのカウンターで、あたしはアルコールに頼るしかなかった。
『ちょっと、ペース早くない?』
隣の席に人影が現れた。
あたしはグラスを見つめたまま答えた。
「まぁ、ね。」
『じゃあ、お兄さんと飲まない?』
「……ナンパ?」
『んー、そうかも。』
「まぁ、飲めるならなんでもいいや。」
『じゃ、オレも同じの。』
目の前に二つのグラスが置かれた。
『じゃ、出逢いに乾杯でもしますか?』
「……なんでもいい。」
『んじゃ、乾杯。』
カチン……
あたしのグラスにその人のグラスが当たった。
あたしはふぅっと息を吐くと、グラスのお酒を喉に流し込んだ。
そして、テーブルにうっぷした。
『お疲れ?』
「違う。」
『じゃあ、フラレた?』
「違う、フッてやったの!」
『そっか。』
するとその人はあたしの頭を優しく撫でた。
なんか、泣ける。
『名前、聞いていい?』
「。」
『ちゃんか。オレは大和。』
「……。」
あたしが黙っていると大和さんはハハッと笑った。
『ま、お兄さんと呼んでくれればいいよ。』
「なんで?」
『その方が落ち着くっつう感じかな?』
そう言ってまた笑う声を聞いて、あたしも少し笑えた。