第3章 ユリと本音。
「幸くん、デートしよ」
談話室でテレビを見ている幸くんに声を掛けると呆れたような顔を向けられた。こいつは一体なにを言ってるんだ。そんな言葉が聞こえてきそうなほどに歪められた表情と大きな溜息。断られるだろうかと幸くんの言葉を待つと呆れ顔に笑みが追加された。
「アンタと付き合ってるつもりはないけど、どこに行きたいわけ?」
「服を買いに行きたいなーと思って」
「そういうことね。いいよ、暇だし付き合ってあげる」
「やったぁ!」
準備してくると自室へ戻る幸くんを見送り、自分も準備しようと自室へと戻る。鏡を見て身形を整えて鞄に財布とポーチとスマホ諸々を入れて部屋を出た。丁度部屋から出てきた幸くんと会い一緒に玄関へと向かう。途中、談話室にいた一成くんに出かけて来ることを伝えて幸くんと二人寮を出た。
「やっぱり幸くんと一緒だったら素敵なものが買えてすごく充実するね」
「…あのさ、」
「ん?」
思った以上に服を買い込んでしまい、少し休憩しようと近くの喫茶店に入った。飲み物を受け取り、天気が良いからと外の席を選ぶと向かい合って座りお互いの戦果を見せ合う。それぞれ満足した買い物になり、まだ夕飯までは時間があるとのんびり談笑に花を咲かせた。
暫くして幸くんが頬杖をつきジト目で私を見た。一度視線を伏せ、ちゅう…とストローを吸った後ゆっくりと視線を上げて口を開く。