ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】
第5章 関係が変わる話
(この恋を忘れるにはきっと長い時間がかかる。
早く忘れて楽になりたい。)
しかし、そんな桜の思いを無下にするかのように、ヴィクトルからメッセージが来たのは別れを告げてからたったの3日後。
「桜に会いたい」
彼女はそのメッセージを見て落涙した。
抑えていた恋心が溢れ出る。
苦しくて、悲しくて…身を切る思いで別れを告げたのに何故また連絡してくるのか、気持ちを踏み躙られた。と悔しさすら感じた。
返事は返さなかった。
けれど彼からのメッセージを拒否することを出来なかった。
それからも毎日毎日、会いたいと送られてくるメッセージに桜はついに彼の愛弟子に会うための決意を決めた。
チムピオーンスポーツクラブ。
ヴィクトルに何度誘われようと1度も足を踏み入れた事の無い場所…。
その近くに毎朝勝生勇利の姿を探す。
1日目は出会えなかった。
2日目と3日目はヴィクトルが横にいた。
4日目はユーリ・プリセツキーと…
そして5日目、やっと彼が1人で向かっている姿を発見し、少し離れた所から話しかけた。
「勝生選手」
「え?あ!あなたは確かヴィクトルの家にいた…」
「突然すみません。少しだけお話ししたい事があり、あなたを待ち伏せてました。
ヴィクトル・ニキフォロフのいない時に貴方と2人だけで話したくて、人がたくさんいる所で構いません。勝生選手の空いてる時間をどうか少しだけ私に下さい。お願いします」
そう言って頭を下げた。
断られるかもしれない、けれど今の桜は彼に頼る他の道が思いつかなかった。
勝生勇利の戸惑う雰囲気が伝わってきて、心臓を跳ねさせていると、ややあって了承の言葉が返ってきた。
「わかりました。お昼の休憩の時間…えっと12時にあそこのカフェで会いましょう」
「っありがとう、ございます」
そうして、約束を取り付けて、桜はその時間まで暇を潰して、少し前からお店に入り、勇利が来るのを待っていた。
「すみません、お待たせしちゃって」
紅茶を頼んでちびちび飲んでいると、頭上から声が降ってきた。
「いえ、私こそ突然のお願いを聞いて下さりすみません!」
「わ、大丈夫ですから頭を上げて下さい」
慌てて立ち上がり頭を下げた桜に勇利が慌てて顔を上げさせる。