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ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】

第1章 契約の話


「スマホ返してください、連絡しなきゃー」

「……どこに?」

「家ですよ、心配掛けちゃうといけないから」

彼女がどこかに助けを求めるのではないかと訝しんでなかなかスマホを返そうとしないヴィクトルに桜も困ってしまう。

このままでは埒が明かないと思った桜は妥協案を口にした。

「じゃあロック解除するからあなたが連絡してください、両親共に英語でもロシア語でも通じるんでー」

ヴィクトルはそれに頷いて、スマホの指紋認証部分を桜に差し出し、解除させると、電話履歴の1番上の番号をタップし、スマホを耳に宛てがった。
それにしたがい横抱きにされていた桜の足が上に上がったことで「これ向かいから見た人パンツ丸見えだな、それにしても酔っ払ったニキフォロフ選手って凄くめんどくさい、勝生選手もこの人に振り回されてるんだろうな、しかしアスリート力持ちだな、お姫様抱っこされたのはじめてだ」なんて呑気に考えてる隙にヴィクトルと桜の家族の通話は終わっていた。

「これで心置き無くお話できるね、サクラちゃん」

ヴィクトルは今にも歌いだしそうなほど上機嫌な声で、名乗ってもいない名前を紡いだ。
その様子に上手く話がついたんだなぁと考えた桜は、車まで運ばれて、そうして彼の家へと招待された。


「インタビューの雑誌で見た家だー、凄ーい」

「ははは、ユウリと同じこと言ってる、面白いね」

まさかこんな世界的に有名なイケメンが私を相手にする訳ない。酔っ払いの奇行だと決めつけていた桜は知らなかった。

前々からヴィクトルが彼の愛弟子に似た桜に目を付けていた事も、虎視眈々と話す機会を伺っていた事も、今日偶然を装って話し掛けてきた事も、そしてこれから彼がしようとしている事も、全て何もかもを彼女は予想すらしていなかった。
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