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ヤンデレヴィクトル氏による幸せ身代わり計画【完結済】

第1章 契約の話


木ノ下 桜がロシアの英雄、ヴィクトル・ニキフォロフと出会ったのはある春の日の事。
その日彼女は友人達との飲み会で、勧められるがままにボトルを飲み干して酷く酔っ払っていた。

「あー、おとーさん?もうすぐ帰るからー、鍵あけてくださーい、はーい、ごめんなさいー、じゃあ切るねー」

ふらふらと頼りない足取りで、家の鍵を忘れたと、彼女は家に電話を掛けながら夜道を一人、歩いていた。

「こんな夜中に1人で危ないよ」

そんな彼女の後ろ姿を追いかけ、心配を滲ませた声音でもって、ヴィクトルは彼女に声をかけた。それが2人の関係の始まりだった。

「家から、近いんで、大丈夫ですー、ご心配なくー…あれ?もしかしてニキフォロフ選手?…コーチ?わー、すごーい、有名人と喋っちゃったー。そちらも夜道お気を付けて〜、さようならー」

友人が彼のファンな事もあり、色々な媒体で彼の事を知っていた彼女は、呂律が少し怪しいながらも、きちんと返事を返し、パパラッチに撮られても迷惑だろうとさっさと離れようとしたのだが、それは突然手を掴んできたヴィクトルによって阻まれた。

「え、と?」

ーーなんで手を掴まれたんだろう?溝にでも落ちそうになってたのかな?
アルコールが回って上手く考えられない頭でそう割り出した桜は足元をちらりと見たけれど、何も存在しておらず、首を傾げた。

「女の子が夜道を1人で歩くなんて感心しないなぁ、家においでよ」

「いやー、でももう家の近くだしー、帰らないと親も心配するしー…」

「大丈夫大丈夫、実は俺、君のお父さんとお友達だからちゃんと、言っておいてあげるよ」

「あはは、絶対うそー、ニキフォロフ選手も結構酔ってるでしょー?可笑しー、もう私お家に帰ってお風呂に入っ…え?わっ!」

突如力強く腕を引かれた桜はバランスを崩してしまい、その原因を作ったヴィクトルの胸に飛び込む形となった。

目を白黒させて男の顔を伺えば、彼はニコニコと笑っていて、何が起きてるのかわからずに固まっている桜を軽々と抱き上げるとスマホを奪い、ぽそりと指紋で解除するタイプか…と呟くとそのまま歩き出した。

「風呂は俺の家で入ればいい」

ーー何を言っても離してくれそうにないな。
酔いでぼんやりとした思考でも桜はそれを悟り、家に帰るのを諦めた。
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