爆乳政治!! 美少女グラビアイドル総理の瀬戸内海戦記☆西海篇
第3章 神戸福原
都に赤旗翻る頃、私は遠くアラビア(Arabia)の街にあって、ある日知己を得たヨルダンの男とカフェの椅子に腰掛けていると、ヨルダンの男が懐より一枚の写真を取り出し私へ突き出した。
「君の御所望の物だ」
ヨルダンの男、顔に些(いささ)かの変わりもなく淡々と言うにつけ、私は問いを投げねばならなかった。
「何を望むと?」
「絵を見たまえよ。聞くより早いさ」
ヨルダンの男、そう言って再び懐を探り、煙草を取り出して一本を口に加えた。私は構わずに写真に目を下ろし、絵の内に見入る事とした。
絵は私の脳裏に鋭い切っ先を突き立て、深く深く刃を差し込んだ。
「先頃、ツガルの友より送られてきた」
ヨルダンの男、ただ突き入れられて呆けるままの私を一瞥し、いつの間にやら三本の吸い殻を灰皿に転がして、四本目に火をつけた。私は漸く正気に醒めて男に問うた。
「こは何か? 何ゆえ貴殿が津軽にツテを持つというのだ!?」
「ソビエト(Soviet)の味方はムスリム(Muslim)の仇。それにあ奴らはアラー(Allah)に否を吐きかけた。見過ごす訳にはいかん。ツガルにはウイグル(Uighur)上がりを潜らせた。ソビエトの出稼ぎに紛れている」
「出羽のクラーク(kulak)が…よもや、しかし俄(にわか)には…」
「悪いが、絵に付け足せる技も粋も持ち合わせてはおらん。ニホン人なら簡単なんだろうが」
無論、日本人とて無理な話だ。しかし、絵に写るのは無理を押し通したモノであり、一揆など脳炎にでも罹(かか)ったとしか思えない。
清水賢一郎(しみず けんいちろう)、出羽の篤志のクラーク、彼の一揆は私の常識を打ち砕いた。そして、私の中に仄(ほの)かに火種が生まれ、それが時を一つずつ刻んで進むにつれて段々と燻(くすぶ)っていった。
「どうした?」
ヨルダンの男、煙草を加えたまま私の顔を覗き込み、私の心中を察した。男は煙草を離して
「望むなら、国に帰してやるが?」
「どうするつもりだ?」
「知り合い頼みだが、ソイツから手を回して貰う」
「…信用に足るのか、そやつは?」
「このケースではな」
ヨルダンの男、三度懐を弄り、一枚の名刺を出した。
「こういう店を商うのか、そやつは?」