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いとし、いとし【短編集】

第41章 向き合うのが遅すぎた【刀剣 大和守安定】


「…ずるい…」

大和守がぼそりと呟く。

「え?何?」

「主はいつも、陸奥守ばっかりだ!!」

顔を上げた彼は此方を見据えて叫び出す。

「今だってそうじゃん!!僕達じゃなくて陸奥守に訳を聞く。ずっと陸奥守の側に居る!!」


それは…。


「何かあったら一番に陸奥守を頼る。近侍だって…僕は、なったことがない。どうして?僕達じゃダメなの?僕達だって…僕だって…」


悔しそうに拳を握りしめて俯く大和守。





確かに…

刀剣男士達が増えてきて、
私一人では手足が足りなくなって来て、

顕現したての男士に兄弟刀が居たり、昔馴染みの仲間が居たりすると、そちらに任せきりになることが増えてきた。

大和守には、元主が同じの加州や世話好きの堀川が居たから、ずっと任せきりであまり関わって来なかったかもしれない…。


それに加えて陸奥は、最初から居たから気心が知れている。一から十まで説明しなくてもいいのが楽で、つい陸奥を頼ってしまう事が多い。

それが、間違いだったんだ…。




「大和守…。ごめんね。ごめん」

袴を握りしめて俯く大和守に
、私は謝る事しか出来ない。



私が、彼を追い詰めてしまったんだ。



彼が『認めない』と言ったのは、私が女だからじゃなくて、私自身の振る舞いが招いた事だ。



「本当にごめんなさい。確かに陸奥に頼りすぎてたかもしれない。貴方達を蔑ろにしてきたつもりは無いけれど…そう思われても仕方ない振る舞いだったのかもしれない…」



彼と彼の仲間である彼等からの信頼を得ていくには、

きっと、

たくさんの時間がかかるだろう。

今までを間違えてしまった分、

これからは、より真摯に、彼等と向き合って行こう。




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