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いとし、いとし【短編集】

第29章 解り合える気がした【刀剣 山姥切国広】


「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」




審神者という者になる事になって、本丸へ着いて早々、こんのすけに促されるまま顕現させた初期刀。

目の前に現れた、刀剣男士という付喪神。

なんだ?…これ…?



「主様?主様‼」


こんのすけに呼ばれて呆けた頭が我に返る。



「あ、ごめんなさい。自分にこんな力があるなんて思わなくて…。本当に刀から人が出てきた…」



「人ではなく、付喪神です‼主様、刀剣男士が口上を述べました。早く契約を交わして下さい」


「あ、えっと…。ごめん。そうだったね」



急かすこんのすけと焦る私を訝しげに見下げる彼。

山姥切国広。


突然、5本の刀を目の前に並べられて、『最初の一振を選べ』と言われて、選んだ刀剣男士。


被っている布から少しだけ見えるキラキラとした髪や、吸い込まれそうな程碧い瞳がすごく綺麗。

こんな綺麗な刀を選んでしまって、良かったのだろうか…。


なんの取り柄も無い私が、

男性とお付き合いをした事も無いような私が、


こんな綺麗な男士様と共に暮らすなんて、ハードルが高すぎる。

どうしよう…。
どうしたらよいだろう…。


一人、あたふたとしていると、



「そんなに写しの俺が気に入らないなら、俺を折って替えてもらえ」


ふと、彼が口を開いた。


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