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いとし、いとし【短編集】

第27章 封印魔法は彼の言葉【krk 高尾和成】


(私なんか…)


彼と付き合いはじめてから、何度、そんな言葉を溢して来ただろう…。


その度に、私と正反対なとびきり明るい彼は、私の手のひらを撫でて宥めてくれる。



『そんなこと、言うなよ』って 、

『おれはすきなんだから』って、





彼から、気持ちを聞いた時は嬉かった。

言葉を発する事が出来ない私を避けるクラスメートが多い中、別け隔てなく接してくれた彼。

そんな彼に私が好意を持たない訳がなく、


嬉しくて、舞い上がって、

自分の事をよく考えもせずに頷いてしまった。




それからの私は、

嫉妬と、陰気の固まりだ。




男女問わず、皆から好かれていて、笑顔が絶えない高尾くん。




『なんであんな子なんかと…』っていう周りからのヒソヒソは充分に目に届いている…。


声は聞こえなくても唇は読めるから…。



本当は、彼にピッタリな明るく可愛い女の子でありたい。


彼のおしゃべりに合わせて、私もおしゃべりしてみたい。


でも、私は、それが出来なくて…。



だから、
今だって、

教室の真ん中で高尾くんと笑い合っているクラスの女子が、キラキラして見えて仕方がない。

私より、お似合いに見えて仕方がない。


そんな光景を見る度、
周りからのヒソヒソを見る度、


音にならない『私なんか…』って言葉が手のひらから溢れる。


私と高尾くんは相応しく無いって事を思い知る。



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