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いとし、いとし【短編集】

第25章 男同士の会話なんてそんなもの【krk 小金井慎二】


「あっ、水戸部。ありがとう」


「………。」


私は慎二みたいに水戸部の言ってる事は分からないけれど、
無言で首を傾げる姿は『大丈夫?』とか、そんな類いの事を言っているんだと思う…。


「大丈夫。大丈夫。」

「………。」


じっとこちらを見つめているのは、私の『大丈夫』を信用していないと言うことだろうか?

それにしても…。



「…あのさ…手」


「水戸部。いつまで、そうしてるんだよ」



『肩から手を離して欲しい』
そう言おうと思った。


でも、私が言い終わるより早く、

今までに聞いたことの無いような慎二の低い声が響く。



「早く離せよ。いくら水戸部でも、結依に触られるのは嫌だ」


真剣な顔つきの慎二にグイッと腕を引かれ、私の身体は容易く彼の腕の中に収まった。

突然近づいた慎二の匂いに、ドキリと心臓が跳ねる。


「結依もさ、頼むからもうダイエットなんてやめて」

慎二とは長い付き合いではあるけれど…

ふだんはニコニコとはしゃいでいる事の多い彼が、こんなに焼きもちを妬いているのははじめてだ。

不謹慎にも、私は今、ドキドキしていた。


「結依…」


ぎゅうっと私を抱きすくめて、
耳元で彼は囁いた。


「俺の言い方が悪かったのは謝るから。でも、本当に、太ってるって言いたかった訳じゃないんだって。本当はさ…」


「うん…」


「あの…。その…」


話はじめたくせに、
続きを待っているのに、
何故か言いよどむ慎二を不思議に思って顔を上げると、少しばつの悪そうに目線をそらされた。

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