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いとし、いとし【短編集】

第3章 半分こ【hq 山口忠】


しなしなのポテトが好きな彼と、
カリカリのポテトが好きな私。

だから、ファーストフードでは、1つのポテトを二人で分けるのが、私達の当たり前になっている。


小さな頃から一緒に過ごして来た私達。


男の子にしては比較的大人しい彼が、
一番の友達だった彼が、
私の好きな人に変わったのは、
中学生ももうすぐ終わりに差し掛かる寒い季節。


違う高校を受験していた私達だから、
もう、今の様に頻繁には一緒に居られない事に気づいて、

私は玉砕覚悟で忠くんに告白をした。



「僕も結依ちゃんが好きだよ」


照れた様に頬を掻きながら、私の気持ちに答えてくれた彼を私は忘れないだろう。



「忠くん」

ポテトに手を伸ばしながら、彼の名を呼ぶ。


「部活終わりなのに、来てくれてありがとうね」


疲れているハズなのに、昨日の寝る前の電話で『忠くんに会いたいな』と言った私の一言を汲み取って、彼は部活後に時間を作ってくれた。


ちっとも、変わらない。優しい人。


「いいんだ。僕も結依ちゃんに会いたかったから…」


そんな風にはにかんで笑う彼に、
私の口角も自然と上がる。
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