Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―
第5章 「吊られし者」THE HANGED MAN
あの日々から数年後、天下の情勢は著しく変動した。数多の英雄達が現れては、滅び去った。消費増税を延期せざるを得ないほどの垂直落下式世界大恐慌(原因は忘れた)により財政破綻した三鷹公国は、隣接する武蔵野共和国への侵略を開始、世に言う「武蔵野戦争」が勃発した。瞬く間に国土の大半を三鷹軍に占領された武蔵野政府は、東京同盟に救援を求めた。しかし同盟は、豊島台池袋などを支配するアフィリランド王国の反乱に苦しめられていた。この頃、諸事情(詳細は忘れた)により同盟軍化物係(バケモノガカリ)に任命されてしまった私は、落合隊長・橘立花と共に、栃木人民共和国との交渉に向かっていた…戦闘機で。
十三宮幸
「本当に宇都宮の連中は味方になってくれるでしょうか?」
橘立花
「そんな事より『バトルフロント(仮)』の新しいイベント、もうやった?」
十三宮幸
「僕はまだだけど、やった奴はみんな『運営マジで死ねばいいのに』って言ってたよ」
落合航
「ゲームなんかやってる暇があったら、任務に集中しろ」
橘立花
「それより『ボーイズ&タンカァー』の最新刊買った?」
落合航
「愚者めが…戦争は武道でもスポーツでもないと、何度言ったら分かるんだ?」
橘立花
「そんなんだから、猫司令官は恋ができないんだよ…」
落合航
「黙れ。天候悪化により視界不明瞭。やむを得ん、陸路で戦場ヶ原溶岩を突破する!」
橘立花
「ちょ…ちょっと待ってよ司令官! 戦闘機で凍結した道路を走るのって、ダンジョンに出会いを求めるのよりも間違っていると思うんだけど!」