Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―
第4章 「月」THE MOON
新羅文部(式部)は、実直で正義感が強く、常に規則を重んずるなど、極めて有能な軍官僚であり、この点は寿能城代からも一応評価されている。ただ、その生真面目さが行き過ぎる事もあると言われ、特に近年は、義勇軍の権限を自らの支配下に編入せんと企図し、これに従わぬ「一匹狼」の寿能城代を失脚させようとしたため、両者の対立が激化している。
顕「何が『円満解決』だ! 血税泥棒めっ!」
紅葉の季節は過ぎ、桜花の季節も未だ遠い長栄山には、樹齢数百年の森林が広がっていた。
隆潮「…民(たみ)の安寧は松樹(しょうじゅ)の如し、末永く護持するには、秩序の死守が絶対に必要じゃ…寿能城代、そろそろ始末したほうが良いかの…」