第3章 雨雲と洗濯
この間の帰りに思ったこと。咲雨はしつこく追わないと俺と話してくれない! いや別にそういうことにしないと俺の心が持たないとかいう話ではない、決して違う、断じて違う。
長年誰かと親しくしていなかった上に、常に卑屈な考えをしてしまう彼女にとって一言二言では相手に嫌われているのではと思っているんだろう。というかこっちが逃げられている。
色々試してみた。
作戦1、咲雨の手伝いをしながら会話してみよう。
「咲雨なにか手伝うことは」
「いえ、首無様のお手を煩わすようなことは決してありませんから!」
「あ、そう……」
作戦2、驚かして話すきっかけを作ろう。
「わっ!」
「うぴゃああああああ!!!!」
うぴゃあって……あ、気絶した。
作戦3、会話は目からと言うし、目を合わせてみよう。
「咲雨、あのね」
「はい」
「……」
「……なにか?」
そもそも前髪が邪魔で目が見えない!!
「毛倡妓……会話って難しいな」
「何言ってんの……?」
そんな不審なものを見るような目はやめてくれ。
参った。咲雨の会話ベタがあそこまで酷いとは……でも他の奴らとは話しているんだよな。
やはり咲雨は俺が嫌いなのだろうか?
「首無、私出かけるから雨が降ったら洗濯物取り込んでおいてね」
「えっ」
「何よ、文句あんの?」
「……ナイデス」
毛倡妓が出かけるなんて珍しいと思ったが外から若菜様や雪女の声が聞こえてきた。ああ、女子会とかいうやつか。