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首無梅雨恋歌

第2章 雨と傘


 咲雨の働きぶりは凄かった。どんな仕事も一生懸命だし、何より暗い顔をしなくなった。あの日みたいな大雨も降らなくなり、六月らしい雨が降っていた。
 ただ雨女の特性のせいか歩いたところが濡れていたりして掃除はあまり向いていないらしい。
 咲雨は自分が歩いたあとの拭き掃除にほぼ一日を費やしている気がする。

「もう、拭いても拭いても終わらない……どうして」
「大丈夫?」
「く、首無様!?」
「手伝うよ」
「そんな、いけません! 私が汚したのですから首無様に手伝ってもらうなど」
「俺が手伝いたいからじゃダメ?」

 咲雨は頼ることをしない。人を頼らなくちゃこの掃除は無理なのに。
 結局咲雨があんまり断るものだから、これ以上頼むと泣きそうなのでいつも引き下がる。
 他のみんなへの対応はどうなのかと言うと。

「咲雨〜この煮物頼んでもいい〜?」
「咲雨このマフラーとこっちのどっちがいいと思う?」
「ささめー! あそべー!」

「わかりました毛倡妓さん。わ、わたしは雪女さんには左の方が似合うと思います。小鬼さん今から煮物を作るので遊べませんが手伝ってもらえませんか?」

 ……俺との対応の差があるような。いや絶対ある。

「首無……あんた何やってんの、覗き? やぁねぇ」
「毛倡妓……咲雨っていつもあんな感じなのか?」
「咲雨? まぁ働き者だし、小妖怪ともよく遊んであげてるみたいだし、すっごいいい子よぉ」


『く、首無様!?』
『い、いえ! 私がやりますから!』
『すみません!』
『いけません! 首無様の手を煩わせるわけにはっ!』


 あれ? 俺避けられてる?
 小妖怪に頼むならなんで俺に頼んでくれないんだ? 俺、嫌われてる?

「毛倡妓、俺の悪いところってなんだと思う?」
「……さぁねぇ、まぁ同情してあげるわ。そうそう、さっき咲雨を買い物に出したけどあの子傘持っていったのかしら……午後から降るのにねぇ」
「ちょっと外行ってくる!」
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