第10章 素直な感情
結構時間が経っただろう。
小さめの紙コップに三分の一程たまった時、
二枚繋がった状態の、
いわゆる番の桜貝を見つけた。
何故かそれが嬉しくて、
そうしたら由佳が
ちょこちょことこちらに走り寄ってきて
番の桜貝を見せつけてきた。
「すごくない?!番の桜貝だよ!!」
凄く偉そうな顔しながらこちらを見ている。
それが少しおかしくてぷっと吹き出しながら
僕も持っていた番の桜貝を由佳に見せると
「なんだぁ~…。蛍も持ってたんだ。番の桜貝って珍しいのに…」
「さっき見つけたんだよ。由佳がこっち来る前に」
「そっか。番の貝は持ち帰ると恋が叶うって地元だと言われてたなぁ~。」
僕は少し体がビックっとした。
「へぇ~。見つけられて良かったじゃん」
僕はよく思ってもない言葉は本当によく出るものだな。
と心から思う。
「うん…そうなんだけど…でも!噂は噂だし!!!」
だろうね。
その噂はウソになるんだから。と思った。
だって二人で見つけているんだから…。
どっちが叶わないんだろうね?
見つけなければ良かったのかも?
なんて思いながら