第10章 素直な感情
次の日朝早く、由佳のマンション前に到着した。
やはり少しすると由佳も出てきて…。
今日は白いフリルのブラウスで襟に、
ふわりとしたリボンを結んでいる。
ハイウエストの藍色のタイトなスカートだった。
足元はコルセットピアスのように見えるヒールを履いている。
動きやすい恰好してきてと言えばよかった。
と思う反面、大人っぽくてこれはこれでいい。
「蛍おはよー!今日はどこ行くの??」
「海。」
「うみ?なんで?なんかあるの?」
「今言っても仕方ないデショ。着いてからにしてよね。」
「わかったぁ~」
そう言いながら駅に着き、電車に乗るとやはり座れた。
「座れて良かったね!」
なんて笑いながら由佳はバッグからガサリとCDを出して
それを僕に渡してきた。
CD-Rを入れる簡易的なケースから取り出すと
CDのタイトルがあったであろう場所には
黒い油性ペンでご丁寧に真っ黒に塗られている。
「な、なに?これ…」
「これ、聞いてみて!J-POPあんまり聴かないって言ってたからおススメなCDを持ってきた!」
「こんな怪しいCD聞きたくないんですケド。」
正直気持ちが悪い。昔、流行ったようなホラーみたいな感じだ。
由佳からじゃなきゃ絶対受け取らないような代物。
「えー!ダメダメ!絶対聞いて!今すぐ!」
「いや…今すぐは無理なんだけど…。」
「あ、そうだけど!!聞いてね!」
あんまりにもしつこいので
わかったと頷き自分のバッグに入れた。
由佳の話を聞きながら、いつもより心地がいい。
自分だけの時に呼ばれる けい は心地がいい。
より自分だけを呼んでくれているってわかるし
話している声も自分だけに向けられたものだ。