第2章 真夏とかき氷
「この部屋が暑いのは羽根が原因かもね」
俺の背中に生えてる羽根。
なんで俺にこんなのが生えているのか俺もわからない。普段は羽根などないのだが急に生えてくるのだ。
これのせいでどれだけ服がダメになったか……。
ある時は起きた瞬間に、ある時はご飯の途中に、ある時は入浴中に。俺がなかなか外に出れないのはこれが理由だったりする。
「まぁ大きいですから」
「それに黒いから熱を集めやすいしね」
羽根があるとその日の俺の仕事が全くできなくなるので正直邪魔でしかない。毟ってやろうか。
「毟りますか?」
「自分の体を傷つけないで」
怒られてしまった。
「何にしても部屋の行き来がねぇ……。トイレとかどうしてるの?」
「なんっ!!! ……まぁ、羽根が消えるまで我慢して、ます」
何でこうユリさんは答え難いことをさらっと聞いてくるんだ!
少しは恥じらってください!
「ええっ! いつか病気になっちゃうよ!」
……心配してくれるのは嬉しいですが恥じらいを持ってください。お願いですから。
「これからも一緒に暮らすってなったらやっぱり大きい一軒家に住むべきかな」
「え?」
「あのね、もし、もしだよ? このまま黒羽丸の記憶が戻らなかったらさ、ずっと一緒に暮らさない?」
なんて嬉しい誘いだろうか。ユリさんは俺のためにそんなことを……。
でもそれはダメだ。きっとこれからユリさんには恋人ができて、そうすると俺は邪魔だろう。
これだけ魅力的な人だ、引く手数多なんだろうな。
「嬉しいですが、ユリさんにはユリさんの人生があります。俺なんかがいたら恋人だってできないでしょう」
優しくて料理が上手い、明るくて笑うとすごく可愛らしい。こんな素敵な人に面倒を見続けてもらうなんて甘えすぎだ。
「私はそれでも構わないよ。それに恋人とかそういう難しいのは、恥ずかしいけど、私はまだわからないの」
「それでもいつか素敵な人が現れます。その時に俺がいたらあなたの邪魔になってしまう」
「じゃあ黒羽丸が恋人になってくれる?」
えっ……?
「……あ」
「ご、ごめんね! 困らせちゃったよね! 私お洗濯しまってくる!」
冗談、だったのか?
冷えピタはまだ冷たいのに体温だけがどんどん上がっていく気がした。