第2章 真夏とかき氷
まだまだ暑い日が続く中俺は最悪な局面に立ち会っていた。
背中に溜まる太陽の熱が室内の温度をどんどん上げていく。まずい頭がクラクラしてきた。
「ただい……あっつい!」
今日は朝からバイトでお昼時に帰ってきてくれた。
「お、かえりなさい…」
「もー、暑いならクーラーなさいよ」
『くーらー』の使い方は教わっていたが使えば非常に電気代がかかるとテレビで言っていたので使うに使えなかったんです。
「すみません……電気代がかかると」
「ちょっ! 扇風機も使ってないの!?」
「すみません電気代が」
「うちわくらい使って!」
「……」
うちわ、忘れていた。
「黒羽丸、一緒に住んでるんだし、私がいないあいだ家のことは任せてるんだから、クーラーとか扇風機とか使いたい時に使っていいんだよ?」
「俺は居候ですし、家のことをやるのは当然です。それに、これ以上ユリさんの負担にはなりたくないので」
「黒羽丸は真面目ね」
『黒羽丸はクソ真面目だな』
誰かに言われた気がする。前に、誰か大切な方に……。
「黒羽丸?」
「あ、はい!」
「大丈夫? もう顔も真っ赤だしぃ」
額に冷えピタを貼られた。
ベタつくのは好きじゃないが、貼られるだけで体の熱がすべて消えていくようで心地よさもある。
「アイスも買ってきて正解ね。ソーダのかき氷でいい?」
「はい」
小さなカップに押し込まれている氷は溶けるまで待たずとも部屋の熱で簡単に溶けていく。
平たい木のスプーンで一口すくって口に入れれば、一瞬で溶けて爽やかな味が広がっていく。
「美味しいです」
「よかった」