第6章 鴉を知るもの
本当に彼らが俺の知り合い(むしろ弟妹)だったなら悪い事をした。
あの後帰ってもらえたが、その顔はひどく傷ついていた。さすがに罪悪感はある。
「黒羽丸……いいの?」
「ユリさん」
記憶の手がかりは探していた。でも記憶さえなければユリさんとずっと一緒にいられる、この平穏がずっと続く、そう思い最近はあまり記憶のことは考えないようにしていた。
「俺は怖いんです。記憶が戻ってあなたと離れるのが」
「黒羽丸……。私もそれは怖いよ、でもね、きっと黒羽丸を心配してくれる家族がちゃんといる、それは今日わかったでしょ? 逃げてばかりじゃダメだよ」
ユリさんは優しい。こんな俺でも軽蔑しないで愛してくれる。
この人とならこれから先幸せを描ける、そんな気がする。
「俺は記憶を失うより、家族を失うより、あなたが消えることが一番怖い。でも、俺を心配してくれる家族がいる、きっと友人もいる、その人のためにも俺は……」
「うん。わかってる」
「ユリさん、俺と一緒に来てくれますか?」
「当たり前よ、黒羽丸をひとりするわけないでしょ」