第6章 鴉を知るもの
次の日はバイトも大学も休みで久々に朝から一緒にいた。久しぶりのユリさんの手料理だ。
ふと家のチャイムが鳴る。
「黒羽丸出てくれる?」
「わかった」
扉の外には眼鏡をかけたキツそうな目の女と、変な髪型で目立つ頭をした男だった。
ユリさんの友達か? いやユリさんに友達はいないし。
「どちら様ですか」
「覚えて、ないのか」
男は残念そうに答えた。
外に立たせるのも悪いので中に入ってもらった。
「黒羽丸ご飯できたよー……誰?」
やはりユリさんの知り合いではなかった。
なら誰なんだ。家にあげるべきではなかったか?
あ、今朝は焼きジャケと卵焼きだ。
「朝早くから申し訳ない。私はささ美、こっちはトサカ丸。我々は黒羽丸を迎えに来ました」
「えっ」
「おいささ美、別にすぐ本題に入らなくても」
「お前が待てと言うから数週間迎えにいくのを待ってあげただろう。本来ならば発見次第本家に連れ帰らならければならなかったというのに」
本家? 連れ帰る?
「あなた達は黒羽丸の何なんですか」
「我らは黒羽丸とは三つ子で、とある家に仕えているもの」
「人違いじゃないのか」
「それはねぇよ、俺らは生まれた時から一緒、間違えるはずがねぇ」
なぜこのタイミングで迎えなんてくるんだ。やっとユリさんと気持ちが通じあったというのに。
「とにかく黒羽丸には一度我々と来てもらわねばならないのです」
「断る」
ユリさんのそばに居ると誓った、この誓を破る訳にはいかない。
ユリさんを悲しませたくないんだ!
「突然現れて、連れていくと言われて、はいそうですかと言うわけないだろう! 俺には俺の生活があるんだ、帰ってくれ」
「そう言われても我らも連れて帰らねばならないのだ、一度帰るだけでも」
「俺が帰る場所はユリさんの隣だ! 見ず知らずのお前らのところじゃない!」