第4章 鴉がなくから帰ろ
「ユリさん、俺本当は嘘をついていたんです。本当は少しずつだけど記憶が戻ってて……俺は、俺は妖怪、なんです」
ユリさんが今までにないくらい真剣に見てくれている。
「鴉天狗っていう妖怪で、まだハッキリとは思い出せませんが、誰かに仕えていたんです。俺は妖怪だとユリさんが知って嫌われたくなかった。だから」
「だから急いで出ていったの?」
「はい」
「……今さらじゃない」
はい?
「でもそっか妖怪だったんだ。私てっきり神様だと思ってた。羽根がたまに出てくるし、大学とかバイトとか知らないしちょっと浮世離れしてたから。まぁ妖怪も神様も大して変わらないけどね」
強く抱きしめられユリさんの体温が、鼓動が聞こえるくらい近い。
「そんなこと気にしないよ。確かにびっくりはしてるけど、それも黒羽丸だから、私は黒羽丸が好きだから。そんなことで出ていくなら何度だって探して連れて帰る!」
俺いったい何をしているんだ。女性にここまで言わせて、俺は……
「ユリさん、俺は妖怪です。でもあなたと過ごした日々の中で俺の中であなたが恩人から女性と意識してしまって、こんなこと思ってはいけないのに、あなたを好きになってしまったんです。
俺はこれからもあなたのそばに居たいです」
「私も黒羽丸が大好き! ずっと、ずっとそばにいてね」