第7章 巌窟王
「莫迦だな、お前は。」
そう言いながら、エドモンは軽く、私に唇を重ね合わせた。
「……、うん。」
何て言われても、いいや。こんな幸せな夢の代償が、「莫迦」の一言で片付くのなら、安いものだ。叶わぬ恋だって、それで構わない。この瞬間を、幸せな記憶として、ずっとずっと、私の中に、大切にしまっておこう。それくらいなら、莫迦な私にだって、許されるかもしれない。
「……ありがとう、アヴェンジャー。」
私は、幸せです。
いつの間にか涙は乾いて、私は急速に眠くなった。
もしも願いが叶うのなら。
「……このまま眠って、いい……?」
エドモンの胸に顔をうずめて、心からの願いを、口にした。
「構わん。そのまま眠れ。」
エドモンの声が、こんなにも近くから聞こえてくる。私はまだ眠っていないのに、とっくに夢の中だなんて、これはなんて、幸福なことだろうか。
「……ん。」
私の目から、また涙が溢れてきた。でも、これは、嬉し涙。
エドモンの腕の中で、エドモンの匂いをいっぱいに吸い込んで、私は今度こそ目を閉じた。