第4章 誓い
―――――酸欠? 魔力不足? ……あぁ、違うね。意識がぼうっとなるぐらいに、アヴェンジャーとのキスが気持ちいいから、だね。ごめんなさい、アヴェンジャー。こんな方法だなんて、知らなくて。貴方にキスを強要させるような形になってしまいました。
くちゅ、くちゅ、と、何ともいやらしい音が響く。時々、アヴェンジャーが唇を離してくれて、私はその間に、ほんの少しだけ呼吸する。でも、苦しい。……本当に苦しいのは、呼吸なんかじゃないけれど。でも、平気。ほんの一度だって、好きな人がこんなに優しく、丁寧にキスをしてくれたのだから。私は―――――藤丸立香は、充分すぎるぐらいに、幸せ者だ。そして、ごめんなさい。
何も言えない代わりに、私の目からは涙が落ちる。
ちゅっ、と音がして、アヴェンジャーの唇が離れる。それが、ひどく名残惜しい。
「……。」
私は、ただぼんやりとアヴェンジャーを見つめることしかできなかった。
アヴェンジャーは何も言わなかった。ただ私の涙を、その手で拭ってくれた。あーあ、情けないな。私は『マスター』なのに。だから、せめて。
「……ごめんなさい。アヴェンジャー、魔力は……? 魔力は、回復した?」
必須確認事項を、口にした。
「……。」
アヴェンジャーは何も言わず、ただ私を抱き寄せた。それは、きっと不必要な行為だ。でも、それでも。私はアヴェンジャーに触れてもらえるのが嬉しくて、そんな余韻を少しでも長く感じていたくて、私はそのまま目を閉じた。