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イケメン戦国~捕らわれた心~

第8章 織姫の涙


辺りが暗くなっても
雨は止まずシトシトと
降り続いていた

「…止まないな」

白雪を膝に 後ろから
抱き抱える様にして
壁に凭れ外を眺める政宗

「………今日は七月八日だもの」

「八日は雨って
決まりでも出来たか?」

「泣いてるんだよ
愛する人と離れ離れで」

「……この雨は織姫の涙か」

白雪が身体を捻って
政宗の胸に擦り寄る

二人は抱き合ったまま
地上に降り注ぐ織姫の涙を
いつまでも眺めていた……





それから数日後

政宗と連れだって城下を歩く
見事に街を彩っていた
笹飾りは 跡形もなく
何時もと同じ風景が広がる

寂しそうに街を眺める白雪の
笑顔が見たくて 何度目かの
いつかの約束を交わす

「今度は二人で過ごそうね」

「いつかは三人で楽しもう」

「え?」

「俺とお前と 俺達の子と」

頬を染め嬉しそうに微笑む白雪に
政宗も嬉しさが込み上げた

「………さ…ま…………さま」

遠くから声がして足を止める
振り返ると武丸が何かを手に
二人を呼びながら駆け寄ってくる

「武丸!」

「なんだ また迷子か?」

「…政宗様!白雪様!」

はぁはぁと肩で息をして
駆けつけた武丸が手にした
何かを差し出した

小さな手の平にあるのは
鮮やかな色の千代紙で
丁寧に作られた笹飾り

「あげるっ!」

それだけ言うと武丸は
もと来た方へ走り去る

「っ…ありがとう!気を付けて帰るのよ!」

「はーい!」

振り返り勢いよく
ブンブンと手を降り
瞬く間に小さくなっていった

「へぇ…良くできてるな」

政宗は小さな
笹飾りを眺め目を細めた

「ねぇ…七夕しようか」

政宗をねだる様に見上げる
キラキラした瞳に捕られた
政宗に 断る理由など有る筈もなく


二人は広瀬川の川辺にしゃがみ
水面にそっと笹飾りを流す
白雪が瞳を閉じて願いを掛ける

川に来る前に茶屋で墨を借り
短冊に願いを書いた

キラキラと光を反射する河面に
鮮やかな千代紙が浮かんで
するすると流されていく

「何を願ったんだ」

「恋人達が幸せであるように」

「ふっ…お前らしいな」

「政宗は?」

「……秘密だ」

「えっ 狡い!私は話したのに」

「………まいっか 許してあげる」

「…生意気」

(そっぽを向いた政宗の耳が
仄かに赤い事に 気付いたから
今日の所は許してあげる…)
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