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イケメン戦国~捕らわれた心~

第8章 織姫の涙


七月七日
城下は賑わいを増していた

旅芸人の一座 行商の一行
走り回る子供達
逢瀬を楽しむ男女

老若男女がこの日を
楽しみにしていたのが分かる

大通りでは
通りを左右に挟んで
大きな竹が立ち並び
色とりどりの笹飾りが
街に華やぎを添えていた

「っ…うわぁ…綺麗…」

「なかなかの光景だな」

風が通りを抜ける度
かさかさと音をたてて
笹飾りが揺らめき
ゆらゆらと影を落とす

「明日には川に流しちゃうんでしょう?
なんだか勿体ないね」

「一瞬だからこその風流だろ」

一瞬と言う言葉に
白雪の顔が僅かに曇る

「……一瞬の逢瀬なんて嫌だな
それも一年に一度なんて」

「七夕伝説か…安心しろ」

白雪の頬を撫でながら
些細な不安を掻き消す様に
大仰に笑って見せる

「俺とお前の間に 割って入るものは
たとえ何であろうとも この俺が
粉々に叩き切ってやる」

余りに尊大な態度に
思わず笑う白雪

「天の川作ったのって
神様じゃなかった?」

「神だろうが 閻魔だろうが
俺からお前を 奪おうとする奴は…斬る」

偉そうに笑う政宗に
白雪が甘える様に腕を絡め
ふにゃりとした笑顔を見せた

(ちょっとしたことで
不安がるくせに…俺が言う事は
何でも信じて安心した顔を見せる…)

「だからお前は そうして笑ってろ」

「うん…」

小さく頷いて 政宗の逞しい腕に
すりっと頬を擦り寄せた

(はぁ…どうしてこう可愛い事する
何が何でも 護ってやるって気にさせられる)

黙りこんだ政宗を
白雪が不思議そう見上げる

「どうしたの?」

「何でもない」

言うと同時に
唇を掠め取る

眼を瞬かせて頬を染め
辺りを見回した白雪は

「もぅ…仕返しっ」

ぐいっと政宗の袖を引っ張ると
ちゅっと音をたてて頬に口付けた

(!!)

思わずそっぽを向くと
顔を覗き込んだ白雪が

「あっ 照れてる!」

と嬉しそうに笑う

「うるせぇ…」

(くそっ…油断大敵だな こいつめ)

仄かに耳を染めた政宗は
城へ戻ったらどう攻めてやろうかと
あれこれ思案するのだった



通りを暫く歩くと
金魚売りや西瓜売り
冷甘酒など多くの店が並び
沢山の人で賑わっている

「わぁ 混んでるね」

「白雪 離れるなよ」

「うん」

繋いだ手を ぎゅっと握り直す
政宗は後にこの手を
離した事を悔やむのだった
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