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イケメン戦国~捕らわれた心~

第2章 おかえり


「突然現れ
突然消えて
今度は空から降ってくるとは
お前は本当に…珍妙な女だ」


言葉とは裏腹に
温かな笑みを浮かべ
からかう様に光秀が言う


「一年も姿を見せずに!
どれ程心配したか!」


眉を寄せ
怒りながら涙ぐむ秀吉


「本当にご無事で何よりです
お待ち申しておりました白雪様!」


これでもかという程の
エンジェルスマイルで迎える三成


「あんたって… ほんと…
心配かけずにいられないの?」


相変わらず
天邪鬼が顔を覗く家康


「やっと戻ったか白雪」


ニヤリと笑って
静かに信長が声をかけた


「っ…はい!ただいま…
ただいま戻りました!」


大きな瞳に涙を溜めて
真っ直ぐ信長を見つめ
凛とした声で応える



武将達全員が心から
穏やかな笑みを湛えて
声を揃える


「おかえり‼」


その様子に
堪えていた涙が溢れ
白雪の頬を濡らしていく


信長の命により
明日の夜
白雪歓迎の宴を催すこととし


各人は後ろ髪を引かれながらも
用意された御殿へと脚をむける


白雪を失い
苦悩の日々を過ごしていた
政宗の心中を察した
信長の配慮だった


二人の時間を
与えてくれた信長に
政宗は心から感謝する


本能寺の一室
あの日から
政宗はここに拠点を構え


いつ戻るか分からぬ
白雪を待ち続けていた


むろん奥州での政務は
抜かることなく


大名の小競合いがあれば
先陣を斬って戦いもした


家臣にも他の武将達にも
弱音を吐くこともなく


ひたすらに
すべき事をして過ごした


そうしていないと
自分を失いそうだった


安土城でも御殿でも
そこにあるべき
白雪の姿を探してしまう


眼を閉じれば夢にみ
覚めれば落胆する
最初のひと月は
そうして過ぎていった


ふた月目に入る頃
本能寺の修復も済み


僧侶に頼んで一廓を借り受け
家臣と共に住まいを移した


白雪の為ならばと
家臣も気持ちよく引き受けてくれた


毎日
白雪が消えた辺りを見回り
いつしかそれが日課となった


笑顔が見たい
声が聞きたい
唇に触れたい
匂いを感じたい
抱き締めたい


五感の全てを使って
白雪を感じたい


この一年を思い返し
政宗は苦笑いした


日常だった幸せが
突如として奪われる


この乱世
そんな事は
慣れている筈だったのに…
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