第3章 また生きる事
[ミサキside]
ジャン・キルシュタインと名乗る男の子に手を取られ、教官室と言われているところに連れて来られた。
私は何で死ねなかったのだろう。
生きる意味はあるんだろうか。
でも、道中話しを聞く限りどうやらここは私が生きていた場所ではないらしくて、もしかしたら世界そのものが全く別のものかも知れない。
もしくは、ここは夢の中の世界で、現実は目を覚ましたら元の場所にいて……
また悍ましい地獄が戻って来るのかも知れない。
そんな事を考えるものだから、また不安で押しつぶされそうになる。
怖くて……
怖くて………
仕方がない私は、無意識の内に繋いだ手をキュッと握った。
「……ミサキ?」
フイに呼ばれた私の名前。
ビクリと身体が強張る。
「大丈夫か?顔色が悪いみてぇだが……。」
何でこの人は、こんな私を心配してくれるんだろう。
その瞳の奥で何を思っているんだろう。
……考えたって仕方がない。
『大丈夫。ありがとう、ジャン』
無理矢理口角を上げ、目を細めて笑う私。
作り笑いは慣れてる。
ジャンはそんな私の頭を撫でた後、その大きな手で、頬に触れた。
「大丈夫だ。俺もいるから。」
目を細めて困った顔をするジャン。
人生で初めて優しさと言うものに触れた私は、その意味が分からなくて少しだけ怖くなった。