第1章 promise
ただの偶然?俺のさくちゃんは女の子だったぞ?
いや、待て、あの時のさくちゃんが女の子だって誰が言った?
細くて色が白くて目がくりっくりだったから、俺が勝手に女の子だって思ってただけじゃないか?
そんなことを考えながら櫻井を見ると、相変わらず舞っている桜の花びらを嬉しそうに眺めていた。
「櫻井、そんなに桜好きなの?」
「え?あ、はい…」
頬をピンクに染める櫻井。
「俺、プロポーズされたの桜の木の下なんです。
だからついつい思い出しちゃって…
あの時も桜舞ってたなぁ、って」
やっぱり、さくちゃんは櫻井なのか?
いや、でも俺婚約指環なんてやってねぇぞ?
「お前指環貰ったって言ってたよな?
今でも持ってるって」
「あぁ、あれは雅紀が話を盛ってるだけですよ
俺が貰ったのはキーホルダーです
ただ、貰うとき指に通して貰ったので、それを雅紀に言ったら『婚約指環じゃん』って」
そう言うと、櫻井はネクタイを弛め、Yシャツのボタンを一つはずすと、手を突っ込み胸元からチェーンを引っ張り出した。
そのチェーンの先に付いていたのは、ピンクのガラス玉。
「これ、そのキーホルダーに付いてたんですけど、ずっと持ち歩いてたら壊れちゃって
だから石の部分だけ加工して、ペンダントヘッドにしたんです」
ガラス玉を掌に乗せ、愛しそうに見る櫻井…
そんな櫻井を、俺は愛しいと思った。
「大切な物なんだね」
そう言うと俺を見て微笑んだ。
「そうですね。桜見て思いました…
やっぱり俺にとって、特別な思い出なんだなぁ、って」
俺もだよ…23年間生きてきた中で、さくちゃんと過ごした5日間は忘れられない特別な思い出…