第2章 決断
『俺のことはエルヴィンとでも呼んでくれ』
それからというものの、エルヴィンさんは1週間に1回私を指名しに来てくれた。そして毎回というものの面白い話をしてくれた。壁の外のこと、『くんれんへいだん』での出来事など。
その中で一切私に触れようとはしてこなかった。ただ、子供のように頭をわしゃわしゃしてくるだけ。でも、私はそれだけで心が満たされた。
いつのまにか、私はエルヴィンさんが来てくれるその1日が待ち遠しくなっていた。
いろんなはなしが聞きたい。母親が子供に寝る前に聞かせてくれるおはなしのような感覚だ。
しかし、いつも全部話してはくれない。
『続きは1週間後、ってことにしよう』
といって帰ってしまうのだ。