第7章 中原中也/黒の世界のノクターン
情事が終わった頃には
冷静さを取り戻す事が出来ていた。
疲れ果てて眠ってしまった彼女の瞳からは
大粒の涙が流れていた。
俺が、泣かせてしまったんだ。
ボタンが引きちぎられた服
所々赤くなった肌
処女膜を破ってしまって流れた血
それと混ざり合う愛液
俺が傷付けて流血させ泣かせてしまった
深い深い罪悪感がのし掛かる。
『貴方は誰………??』
怯えた表情でそう言った聖子が頭から離れない。
怖かっただろう。
俺じゃないと思いたかったのだろう。
「俺は…何で、こんなこと…」
この場にいると後悔と自責で目眩がしそうで
逃げるように部屋を出ていった。
「おやおや、中也ってば酷いね。こんな状態でキミを置いていくなんてさ」
中也が出て行ってから数分後。
太宰が部屋に入って来た。
「半信半疑だったけど、思った以上に効くもんだね、この媚薬ってやつ」
小さな小瓶をまじまじと見つめては、先程中也に全部飲まれてしまった葡萄酒のボトルを近くのテーブルに置いた。
「実はこれ、ワイン(葡萄酒)じゃなくてカルヴァトス(林檎酒)なんだよね。林檎に薬を混ぜるなんて、まるで童話の白雪姫みたいでしょ?」
聞こえるハズのない聖子に楽しそうに語っては、その唇にキスを落とす。
「ちぇ。私のキスでは起きないか……。ふふ、これからが楽しみだなぁ♪」
眠る彼女にシーツを掛けて
太宰はご機嫌な様子で部屋を出たのであった。
終わり。