第6章 森鴎外/学術的興味
首領は中也と紅葉にエリスを頼み、独房から離れるよう指示を出した。
「可愛いお嬢さんを外へ出したという事は、私を殺すの?」
「そうだ…と言ったらどうする?」
「どうも…。化け物の私には居場所なんてないから…、さっさと殺して。」
「まだ若いのに…最近の子はみんなすぐに死を望むのだね。医者として切ない限りだ」
「…誰の事を言っているの? 貴方の大切な人?」
「おや…キミは随分と聡いようだ。」
首領と呼ばれたこの人は
随分と寂しそうな顔をしているように思えた。
マフィアの首領というからもっと極悪非道な人間かと思っていたけど…。
「あ、あとね、さっきのとっても可愛いエリスちゃんなんだけど、彼女は私の妻ですから♪ お嬢さんではないのだよ、そこのところは勘違いしないでね?」
「………そう。何か事情があるのね。大丈夫、変に詮索したりしないから。」
「あ、キミもそんな1番傷付くタイプの反応を!!?」
もー酷いなぁ…と泣き真似をする目の前の男は
どう考えてもマフィアの首領には見えなかった。
そして彼はポケットから止血帯や包帯を取り出し
先程自らが切り付けた脚を治療していく。
「何、してるの?」
「動かないでね、すぐに終わるから」
「…本当に医者なのね…その白衣も…」
「何だと思ったのかな?(笑)」
「コスプレ」
「キミもなかなか酷い事言うよね」
鮮やかな手際であっという間に応急措置がなされた。
「殺すんじゃなかったの?」
「言っただろう? 他にも試したい事があるって。その前に出欠多量で死なれたら困るからね♪」
「あぁ。成る程。で? 何するの?」
「キミは痛みという感覚が全く無い。じゃあ…他の感覚はどうなんだろうね?」
「…そういえば、痒みや熱さ、冷たさ、気温等の感覚も人より鈍いような気がする。」
「成る程。じゃあ…こういうのはどうかな?」
首領はまたメスを取り出し
今度は着ている服を切り裂いた。
「…!?」
「ふふ。これからは…オトナの時間、だよ?」
首領の顔付きが急に変わった。