第5章 中島敦/初キス大作戦
「凄いね、綺麗なマンション…」
「うん、そうだね…」
「お家に招いてくれるなんて、敦くんの先輩って優しいね♪」
「うん、そうだね…」
先日、中也さんに相談したところ
手を繋ぐ…の次のステップ…
つまり、その…き、キス、までいくにはムードが必要だって言われて
夢のお家デートでDVD観賞!をする事になりました。
僕の家には残念ながらDVDデッキがなくて…
中也さんが先輩っていう設定で、お部屋を貸してくれるって提案してくれたんだけど…
中也さん…こんなに高そうなマンションに住んでるんだ…
何だろう、この敗北感…
ピンポーン♪
「おう、敦来たか。入れよ」
「お邪魔します…」
「お、お邪魔します! あの、お招き頂きありがとうございます!」
「あぁ、あんたが聖子ちゃん?」
「はい!」
「遠慮はいらねぇ、ゆっくりしていきな?」
「ありがとうございます///」
ちょっと、中也さんズルい。
そしてリビングに通して貰うと、見たことないくらい大きなテレビ、ワインセラー、重厚感ある皮貼りのソファー…
別世界だ…
なんなの。マフィアってそんなに儲かるの??
格差社会の縮図がここに!!
「俺はちょっと出掛けて来るから、ゆっくりしていけよ?」
「あ、はい、ありがとうございます中也さん」
「ありがとうございます!」
パタンとドアを閉めて、中也さんは部屋を出て行った。
ーーーーー
よし、こっからが本番だな。
俺は出て行くフリをして、別部屋に入った。
あのリビングには隠しカメラがいくつも設置してあり、その映像をこの別部屋のモニターで見るって寸法だ。
別に覗き見する為だけじゃねぇぞ。
この映像を見て、俺がこうしたら良いと指示をメールで送る為だ。
俺はソファーに腰を降ろして、モニターに集中した。