第1章 江戸川乱歩/名探偵の独占欲
「き…緊張するな…」
思わず小声になり、辺りをキョロキョロと見渡してしまう。
男性の部屋になんて入るのは初めてだ。
ーここは江戸川乱歩さんの寮のお部屋
本日、武装探偵社へと入社したのだが
まだ寮が決まっていない為、決定するまでの間一緒に住むことになったのだ。
何だか色々とダメな気もするが
みんな口を揃えて「乱歩さんなら大丈夫」というのだからきっと大丈夫なんだろう。
それでも、男性のお部屋に一人きりになれば緊張しちゃう訳で。
落ち着かない心地で居た。
ピンポーン♪
突然のチャイムに心臓が跳ねる
ど、どうしよう…生憎家主はつい先程お風呂に入ったばかりだ。
勝手に出て良いものなのか。
しかし、重要な案件だったらすぐに伝えなければ…
私は意を決してドアを開けた
「………え?」
ドアを開けると綺麗な顔立ちをした男性がとてつもなく驚いた様子で。
私は慌てて今の現状を説明した。
「ビックリしたである。まさか女性が出てくるとは思わなかったであるから…」
「すみません驚かせてしまって。あ、お茶です、良かったら…」
「い、いや、お気遣いなく…」
「いえいえ、是非、どうぞ…」
遠慮がちな青年と遠慮のしあいっこみたいな空気になり少し笑ってしまう。
ポオさんと、アライグマのカール君。
乱歩さんへ新作の推理小説を持ってきたんだとか。
「でも凄いですね、推理小説が書けるなんて!」
「そ…そんなことないである…乱歩くんには5分も掛からずに犯人を当てられてしまうし…」
「そ、そうなんですね…(笑) あ、私も読んでみたいのですが…推理小説、私も好きなんです」
「本当であるか!?」
ポオさんは嬉しそうに小説を見せてくれた。